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【静かな有事】第3部 逆転の発想(2)減る支え手…「助け合い」知恵比べ(産経新聞)

 急速に進む少子高齢化。社会の支え手が減れば、税収も減り、行政の対応にもおのずと限界が生じる。若者が激減する地域では、高齢者同士が支え合う機会が増えることも予想される。この逆境を、かつては当たり前だった「助け合い」の精神で乗り切ろうという動きも出始めている。

 気温10度以下に冷え込む寒空の下。横浜市栄区の高台にある公田町(くでんちょう)団地(1160戸)の集会所前は多くの高齢者でにぎわっていた。団地の住民で組織するNPO法人「お互いさまねっと」が毎週火曜日に開く青空市だ。

 取れたての野菜や果物、弁当、トイレットペーパーが所狭しと並ぶ。買い物を終えた近藤カツヨさん(70)は「団地の外に行くにも急坂がきつく、バスやタクシーを使わないといけない。青空市はとても助かる」と笑顔を見せる。

 青空市が始まったのは平成20年10月。前年、団地内のスーパー跡地に入居していたコンビニエンスストアが撤退したことがきっかけだ。日用品を買う店の確保まで行政に頼るわけにはいかない。自治会長でNPO法人理事長の大野省治さん(79)は「ここ数年、孤独死もあった。自分たちで何とかしようと有志で立ち上げた」と振り返る。

 青空市は「お互いさまねっと」のメンバーが早朝から近所のスーパーや農協へ出向き商品をそろえる。自宅まで商品を持ち帰るのが大変な高齢者には付き添いも行う。いまや青空市は住民のコミュニケーションの場だ。「買い物に来ない高齢者の安否確認にもなる」と大野さん。近く喫茶サービスも予定している。

                  ◆◇◆

 身近にお店がなく買い物がままならない“買い物難民”は全国的な問題だ。高齢者が栄養不足に陥るケースも目立つようになってきた。不安は募るばかりだが、新たな「支え手」も登場し始めた。

 65歳以上が市民の4人に1人を占める富山県高岡市では、郊外に出店した大規模商業施設の影響で、中小スーパーの閉店が続いた。車を運転できない高齢者は不便さに困り果てる。

 NPO法人「買物くらし応援団」の能崎(のざき)博代表(67)が同級生らとともにボランティアで高齢者に日用品の配達を始めたのは18年だ。地元スーパーの2階に事務所を間借りし、会員から注文を受けた商品を階下のスーパーで購入する。年会費1千円、配達料1回100円で請け負う。

 1日の配達は約20件。注文、買い出し、配達をボランティアスタッフ9人で分担する。能崎代表は「スーパーの協力がないと財政的には苦しいが、配達に行くとついお客さんと話し込んでしまう」と楽しそう。

 大型トラックの荷台がコンビニ店舗に早変わり。鳥取県江府町などでスーパーを展開する「安達商事」は、コンビニエンスストア大手「ローソン」と提携し、専用に開発した「ひまわり号」で山間集落を回る。安達享司社長は「ローソンの商品を置くことで若者にも客層が広がった。全国で少子高齢化が進む中、各地のスーパーなどがうちに注目する」と話す。

                  ◆◇◆

 「これまで日本の社会保障のモデルは高福祉高負担の北欧諸国だったが、これらの国も高齢化が進み、税率を上げられなくなっている。最近は逆に北欧諸国が『官民共同の日本のやり方を学びたい』というようになってきた」と指摘するのは東大高齢社会総合研究機構の秋山弘子教授だ。

 日本は男性の平均寿命が79・29歳、女性86・05歳(20年)と世界でもトップクラスの長寿国。「高齢化は公害などと違い、国民が努力した結果ととらえ直す必要がある」と語る。

 千葉大学の広井良典教授の分析によると、地域で生活する「地域密着人口」の割合は、定年退職者の増加に伴い今後40年間で現在の約35%から50%近くまで増える見通し。地域活動の重要性はますます高まる。

 同機構は千葉県柏市で高齢社会に対応した街づくりの社会実験を始めた。団地の屋上や休耕地を農園にして、定年退職後の高齢者が収入を得る場を作る。東大大学院の研究室は、住民が事前予約するとコンピューターが自動的に運行計画を作成し、指定したバス停に車が時間通りにやってくる「オンデマンドバス」の実証実験を行った。

 秋山教授は「日本が少子高齢化問題をどう解決するか世界が注目している。先進モデルを示すことは日本が世界に貢献できるひとつの領域だし、そこにはビジネスチャンスも生まれる」と力を込める。

 政府も1月末、公共サービスを官民が協力して行う「新しい公共」の検討会議を立ち上げた。企業や地域社会、家族などすべての社会構成員がその役割と責任をどう分担するのか。少子高齢化社会は、助け合いの知恵比べも促している。

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